特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
4.ミトコンドリア
ミトコンドリア病の解明
後藤 雄一
1
Yuichi Goto
1
1国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第二部
pp.440-441
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101348
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●ミトコンドリア病の病因の新展開
ミトコンドリアに関する核遺伝子は1000近くあるとされており,すでに100近い核遺伝子の変異が患者で同定されている。次世代シークエンサーによる研究で,ミトコンドリア内の酵素自体,ミトコンドリアへの輸送にかかわるタンパク,さらにはミトコンドリアの品質管理にかかわるタンパク質の遺伝子などの変異がヒト患者で次々と同定されている1)。
複製や転写にかかわるタンパク質の異常は,mtDNAの多重欠失や欠乏(枯渇)状態を惹起する。一方,ミトコンドリア病で最も頻度の高いmtDNA変異である3243変異に代表される転移RNA領域の異常や1555変異(難聴)に代表されるリボソーム領域の異常は,結果としてmtDNA由来のタンパクの翻訳異常を引き起こす。転写産物から実際のタンパクを生成するこの翻訳過程についても多くの核由来因子がかかわっており,この翻訳過程の理解が必要になる。
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