特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
1.リボソーム
リボソームに翻訳以外の機能がある―リボヌクレアーゼ作用阻害
宮崎 健太郎
1
Kentaro Miyazaki
1
1産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門
pp.356-357
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101312
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●リボヌクレアーゼT2とリボソームの不思議な関係
リボヌクレアーゼ(RNase)T2は麹菌(Aspergillus oryzae)のタカジアスターゼ(アミラーゼ)製剤中の不純物として,RNase T1とともに江上不二夫らにより発見された1)。麹菌以外にも細菌,カビ,動物,植物,ウイルスなど幅広い生物のゲノムに見出されており,RNaseファミリーのなかでも最も広く生物界に分布する酵素である。大腸菌ではRNase Ⅰとして知られている。ペリプラズムに局在する分子量27 kDaの単量体酵素であること,他のRNaseと異なり活性にMgを必要としないこと(EDTA存在下で活性)など,RNase Ⅰの酵素学的な諸性質が明らかにされたが,さらに興味深い現象が知られていた。細胞を破砕して精製すると,常にリボソームと結合した不活性な状態で分離されるのである。RNaseとリボソーム,一見無関係にも思える分子同士の相互作用についてはさらに研究が進められ,50Sサブユニットではなく30SサブユニットがRNase活性を阻害すること,ただし,裸の16S rRNAやタンパク質成分(TP30)のみでは阻害されないことも知られていた2)。このように一定の知見は集積されたものの,RNase Ⅰとリボソームの相互作用の実態や生理的意義については不明であった。
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