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特集 細胞極性の制御
神経上皮細胞の頂底極性制御因子Crb・Moe複合体
Role of the Crb・Moe complex in the maintenance of neuroepithelial apicobasal polarity
大畑 慎也
1,2
,
岡本 仁
3
Shinya Ohata
1,2
,
Hitoshi Okamoto
3
1理化学研究所 脳科学総合研究センター
2カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 神経外科
3理化学研究所 脳科学総合研究センター 発生遺伝学制御研究チーム
pp.171-176
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101280
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初期神経発生期における神経幹細胞である神経上皮細胞は,脳の内側(頂端/脳室側)から外側(基底/脳膜側)まで伸びる突起を持つ細長い細胞である(図1)。そして,細胞周期に応じて,その細胞核をエレベーターのように移動させ,核が脳室側に位置するときにだけ細胞分裂を行い,自己増殖あるいは神経細胞などへ分化する。機能的な神経系を構築するためには,神経上皮細胞が特定の位置で秩序を以って増殖することが必要不可欠であると考えられる。このような運動を可能にする神経上皮細胞の頂端(apical)-基底(basal)方向の空間的非対称性は,頂底極性(apicobasal polarity)と呼ばれる。頂底極性の形成・維持には進化的に保存された3種類のタンパク質複合体,1)Crumbs(Crb)・Mosaic eyes(Moe)複合体,2)Par複合体,3)Scribble複合体が必須の役割を果たす1)。しかしながら,どのような分子機構で神経上皮細胞が頂底極性を維持し,脳室側だけで細胞分裂をするのかは不明のままで,神経発生学上の中心的課題として残されていた。本稿では,Crb・Moe複合体による神経上皮細胞の頂底極性維持および細胞分裂位置を規定する分子機構に関する筆者らの最新の研究2)を紹介するとともに,今後の課題・展望を議論する。
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