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乳がんは女性の間では世界的にも最も発生頻度が高いがんで,分子生物学的解析の進歩によりこれまでに乳がんの発生・進展に関与する多くの遺伝子が解明された。乳がんは臨床的経過をみても多様性の大きな病気で,多数の遺伝子からなる複雑な機能調節ネットワークによってその発生・進展が制御されていることは容易に推測される1,2)。また,乳がんを含む複数のヒトがんにおいて,その生物学的特徴を規定する因子の一つとしてゲノムDNAの過剰,欠失,増幅などのコピー数変異(DNA copy number alterations;CNAs)が重要である。comparative genomic hybridization(CGH)法は,全染色体を対象にしてこのような不平衡ゲノム異常のパターンを解析するために広く使われている3-5)。最近の研究ではがん細胞ゲノムの膨大な複雑さを示すために,より分解能の高いアレイベースのCGHを使用し,欠失,逆位やコピー数変異のようなゲノム変異の詳細な検出が進み,さらにその網羅的遺伝子発現解析結果とも併せ,がんの発生・進展における重要な役割の理解が進んできた6,7)。
CGH法では腫瘍および正常組織からのゲノムDNAが,DNA配列プローブを含んでいるマイクロアレイへハブリダイゼーションする。その結果,得られた結合DNAシグナル強度の腫瘍/正常の比率を算出することによって,全がんゲノムにわたるDNAコピー数変異(CNAs)の高解像度分析結果を提供する。現在,市販のCGHアレイと一塩基多型(SNP)アレイ(一塩基多型のみならず,遺伝子コピー数やヘテロ接合性喪失(LOH)の検出が可能)は数十万から数百万ものオリゴヌクレオチドプローブを含み,超高解像度ゲノムプロファイルを生み出す9,10)。このような状況のなか,Kweiらは乳がんのゲノムプロファイリングで,DNAコピー数変異の三つの特徴的なパターンを報告した11)。この知見を中心に,乳がんにおけるDNAコピー数変異を概説する。
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