特集 細胞核―構造と機能
5.染色体
SMC ATPase:コンデンシンとコヒーシンのコアサブユニット
木下 和久
1
,
平野 達也
1
Kazuhisa Kinoshita
1
,
Tatsuya Hirano
1
1理化学研究所 基幹研究所 平野染色体ダイナミクス研究室
pp.446-449
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101205
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SMC(structural maintenance of chromosomes)タンパク質ファミリーはその名前のとおり染色体の構造維持に役割を果たす,進化的に保存されたタンパク質ファミリーである1)。遺伝学的および生化学的アプローチによる先駆的な研究から,真核生物の細胞分裂時におけるM期染色体の凝縮・分配に必須な役割を果たすことが示されていたが,現在ではその役割はM期にとどまらず,細胞周期を通じて幅広くゲノムの構造と機能に重要であることが明らかになってきている。また,SMCタンパク質は真核生物のみならず大腸菌や枯草菌などバクテリアにまで及んで保存されており,進化生物学的な観点からみればヒストンよりさらに古い起源を持つということができる。すなわち,SMCタンパク質は核膜を持たない単細胞の原核生物から多細胞の動物や植物を含む高等真核生物に至るまで,ゲノムDNAの維持・継承にかかわってきた最も基本的な染色体タンパク質の一つである。したがって,SMCタンパク質ファミリーの機能を解析することは,染色体とクロマチンの構造と機能の最も根幹をなす分子メカニズムの理解に直結する。本稿では,特にSMCタンパク質のATPaseの果たす役割に焦点をあて,最近の研究によって得られた知見を含めて概観してみることにしたい。
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