今月の主題 高血圧症—今日の治療
高血圧研究のトピックス
Na-K-ATPase抑制因子
後藤 淳郎
1
,
山田 薫
1
1東京大学医学部・第2内科
pp.1408-1410
発行日 1985年8月10日
Published Date 1985/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219882
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
本態性高血圧症の成因は未だ明らかにされていないが,疫学ならびに臨床上の成績から,本症と食塩摂取との関連が示唆されている.最近,本態性高血圧症に基づく腎硬化症の慢性腎不全6例において,正常腎の移植により治療抵抗性の高血圧が全例で正常化した事実が報告され,本態性高血圧症においては何らかの腎の異常が高血圧発症にきわめて重要であること,言い換えれば血圧は腎によって規定されていることが端的に示された.
腎の異常の詳細は不明であるが,Dahlの食塩感受性ラットの腎でのNa排泄障害の存在を考慮すると,本態性高血圧患者腎においても第一義的にNa排泄障害が存在する可能性が大きい.現時点では,高血圧の発症を食塩という環境因子と腎Na排泄能という遺伝因子の両面からとらえ,その結果としての血圧上昇の機序に昇圧性の液性因子の関与を想定する説が有力である.本稿では昇圧性の液性因子として注目されているNa-K-ATPase抑制因子について述べる.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.