特集 神経系に作用する薬物マニュアル
Ⅲ.代謝的に作用する薬物
酵素活性に影響する薬物
Na, K-ATPase
太田 英彦
1
Hidehiko Ohta
1
1浜松医科大学生化学第2講座
pp.492-493
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900268
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「概説」
Na,K-ATPase1)は,塩基配列や反応機構の近縁性から筋小胞体のCa-ATPaseや胃の壁細胞のH,K-ATPaseとならんで,E1-E2型ないしはP型ATPaseとして分類される。一価陽イオンの能動輸送ポンプである。このATPaseは1957年に,Na,Kイオンの共存を必要とするATPaseとして発見され,以後赤血球膜の能動輸送機構との関連などが定量的に調べられ,ATP 1分子の加水分解当りNaイオン3コ,Kイオン2コを輸送することが明らかになった。その研究過程で,ウワバインをはじめとする強心配糖体はATPase活性とイオン輸送活性の双方を阻害する特異的な試薬として活用され,この酵素1分子当り1分子が結合することが分かっている2,3)。
この酵素は高等動物の脳,腎臓,心臓,小腸などのほか,サメの直腸腺,アヒルの塩腺,電気ウナギやシビレエイの発電器官などの細胞膜に多いが,赤血球を含めあらゆる細胞の細胞膜に存在する。通常の上皮細胞では管腔側でなく側底膜に局在するが,脳室の脈絡叢や網膜の色素上皮細胞では管腔側に見出される。このような極性分布はankyrin,fodrinなど膜骨格系との相互作用に基づくとされている。
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