特集 酵素検査法
血液
膜 ATPase
倉科 周介
1
1東大衛生学
pp.1292-1294
発行日 1971年12月1日
Published Date 1971/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907423
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生体内で営まれる各種の生物反応が円滑に進行するためには,微妙に調整された反応条件の恒常性が必要である.しかも生体を浸す水圏および気圏は全体としては恒常的な環境を維持しながらも,局所的には変動常ならざるのが習いである.ために生物は外界との間に動的平衡を維持しつつなお自己の内部環境安定を可能とする各種の調節機構を発達させた.細胞膜に存する能動輸送(active transport)の機構もその1つである.これがATP消費反応であることを,細胞膜内外の1価陽イオン出納に関して確認したSkou1)以来,この反応の担体をNa-K-ATPaseもしくはtransport ATPaseと呼ぶ習慣がある.
Na-K-ATPaSeは生物界に広く分布し,また生体内局在もおよそすべての実質組胞にわたる.しかし特に活性が高いことで注目されるのは脳,腎など細胞膜を介する電解質の移動が,その生理機能発現に重要な意義を有すると見られる器官である.他に特殊な例としては海鳥のsalt gland,デンキウナギの発電器官,ガマガエルの膀胱などが上げられる2).
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