Japanese
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特集 摂食制御の分子過程
視床下部におけるAMPキナーゼの摂食・代謝調節作用
Regulatory role of hypothalamic AMP kinase in food intake and metabolism
箕越 靖彦
1
Yasuhiko Minokoshi
1
1生理学研究所 発達生理学研究系 生殖・内分泌発達機構研究部門
pp.11-16
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101100
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AMPキナーゼ(AMP-activated protein kinase;AMPK)は,酵母から植物,哺乳動物に至るほとんどの真核細胞に発現するセリン/スレオニンキナーゼである。AMPKは細胞内エネルギーレベルの低下(AMP/ATP比の上昇)によって活性化し,代謝,イオンチャネル活性,遺伝子発現を変化させてATPレベルを回復させる1)。このことからAMPKは“metabolic sensor”または“fuel gauge”と呼ばれている。また,近年の研究により,AMPKはメトホルミンなどの糖尿病治療薬,運動,レプチンやアディポネクチンなどのホルモン,自律神経によって活性化して,糖・脂質代謝を調節することが明らかとなった1-4)。さらに,視床下部AMPKがレプチン,グルコース,グレリンなどの神経細胞内でのシグナル分子として働き,摂食を調節することが示された1,4-6)。
AMPKは様々なイオンチャネル活性を制御するとともに,遺伝子発現を調節する。従って,これらの機能を介して神経活動を制御し,摂食を調節することが考えられる。しかし,最近の研究によると,AMPKが末梢組織と同様に神経細胞においても脂肪酸代謝を変化させ,これを介して摂食を調節することが明らかとなってきた。すなわち,AMPKは栄養素やホルモン,神経伝達物質から情報を脂肪酸代謝において統合し,摂食行動,代謝を調節すると考えられている(図1)2,4-6)。本稿では,AMPKを介する視床下部でのエネルギー感受機構と,それによって制御される摂食調節作用について概説する。
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