特集 伝達物質と受容体
3.アミン
セロトニン
統合失調症の認知機能障害における5-HT受容体の役割
住吉 太幹
1
Tomiki Sumiyoshi
1
1富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座
pp.436-437
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100907
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●統合失調症における認知機能障害
統合失調症は発症率が約1%のcommon diseaseであり,陽性症状(幻覚,妄想など),陰性症状(感情の平板化,社会的引きこもりなど)などの精神病症状により特徴づけられる代表的な精神科疾患である。早期に適切な治療を開始することで症状の持続や再燃を抑えることが求められている。統合失調症患者では,学習記憶,ワーキングメモリー,遂行機能,注意,語流暢性,情報処理速度などの認知機能領域を反映する神経心理学的検査成績が,健常者と比べ1-2 SD程度低下していることが知られている。この認知機能障害は発症前の段階(前駆期)においてすでに存在するとされ,就労など患者の社会機能や予後に対し,精神病症状よりも大きな影響を及ぼす因子として注目されている。このような背景から認知機能障害の体系的な評価法の整備が求められており,NIHを中心に開発された包括的なテストバッテリーであるMATRICS-CCBなどの本邦への導入の動きもある。
これら認知機能障害の生物学的基盤として,脳機能・形態の疾患特異的な変化が注目されている。例えば,神経活動を簡便に測定できる電気生理学的指標である事象関連電位(P300, mismatch negativity)やprepulse inhibitionの異常などが見出されている。
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