Japanese
English
特集 NMDA受容体と精神疾患
統合失調症におけるNMDA受容体とガンマオシレーション異常
NMDA receptor and gamma oscillation abnormalities in schizophrenia
平野 羊嗣
1
Yoji HIRANO
1
1九州大学大学院医学研究院精神病態医学
キーワード:
NMDA受容体
,
ガンマオシレーション
,
統合失調症
,
脳波/脳磁図
,
バイオマーカー
,
E/Iバランス
Keyword:
NMDA受容体
,
ガンマオシレーション
,
統合失調症
,
脳波/脳磁図
,
バイオマーカー
,
E/Iバランス
pp.953-959
発行日 2021年6月12日
Published Date 2021/6/12
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27711953
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神経科学の飛躍的な進歩にもかかわらず,統合失調症の病因はいまだに不明で,古典的なドパミン仮説に基づいた現在のドパミン拮抗薬では完治に至らないことも多く,同疾患の病態解明および新薬の開発は緊急の課題である.その課題の克服のためには,新たな病態仮説の検証と,臨床と基礎研究の橋渡しが可能な生物学的指標の同定が望まれる.脳の情報伝達をつかさどる神経の周期的活動(ニューラルオシレーション)のなかでも,とくにガンマオシレーション(30~100Hz)は,統合失調症の情報伝達異常や病態そのものに関連することがわかってきた.興奮性ニューロン(E)の異常(NMDA受容体の機能低下)と,神経回路内の律動リズムを作るGABA作動性の抑制性介在ニューロン(I)の障害ならびに,両者のバランス(E/Iバランス)が崩れることで,内発的な異常な神経活動が生じ,種々の精神症状や認知機能障害をきたすことが知られてきた.ガンマオシレーション異常は,統合失調症のみならず同疾患のモデル動物でも同様の結果が得られるため,統合失調症の新たな病態モデルや治療ターゲットとして支持されている.本稿では,統合失調症のガンマオシレーション異常とNMDA受容体機能低下モデル動物の知見を中心に紹介し,本指標の生物学的指標としての有用性や今後の展望について概観したいと思う.
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