Japanese
English
特集 脳と糖脂質
細菌性神経毒素とガングリオシド
Bacterial neurotoxin and gangliosides
居原 秀
1
,
小崎 俊司
2
Hideshi Ihara
1
,
Shunji Kozaki
2
1大阪府立大学理学部生物科学科
2大阪府立大学生命環境学部獣医学科
pp.228-233
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100849
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
細菌感染症の病原因子として研究されてきた細菌毒素は,毒性発現機構の解明が進むにつれて,毒素の構造を巧みに利用した非常に高い特異性を発揮して作用することが明らかになってきた。細菌毒素の多くは,酵素活性を有する部分A(active)サブユニット(またはドメイン)と,標的組織または細胞に結合する部分B(binding)サブユニット(またはドメイン)からなるA-B型毒素の構造をとっている。細菌毒素が毒性を発揮するためには,まず細胞膜表面に結合しなければならず,細菌毒素が微量で特異性の高い作用を示すのは,Bサブユニットが細胞膜上に存在する特定の物質と高い親和性を持って結合するため,毒素が標的組織または細胞内に容易に侵入することができることが主な要因のひとつになっている。
細菌毒素に対するレセプターが多く報告されているが,その中でも多くの細菌毒素が細胞膜上に存在するガングリオシドをレセプターとして認識する(表1)。自然界で最も強力で,神経系に特異的に作用するクロストリジウム神経毒素(ボツリヌス毒素A-G型,破傷風毒素)とそのレセプターとしてのガングリオシドがよく研究されており,これらの毒素群が同一の祖先分子から進化しているにもかかわらず,ガングリオシドの要求性,認識機構,補因子の種類が異なっていることも明らかになっている。本章では,クロストリジウム神経毒素のレセプターとしてのガングリオシドについて概説する。
![](/cover/first?img=mf.2425100849.png)
Copyright © 2009, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.