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特集 オートファジー
植物細胞の液胞とオートファジー
Plant vacuoles and autophagy
森安 裕二
1
,
吉本 光希
2
Yuji Moriyasu
1
,
Kohki Yoshimoto
2
1静岡県立大学食品栄養科学部
2岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所
pp.534-539
発行日 2003年12月15日
Published Date 2003/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100798
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オートファジーは,細胞が自身のオルガネラなどを含む細胞質成分を膜構造内に隔離し分解する現象であり,真核生物に普遍的に存在することが知られている。植物においてもオートファジーの存在は古くから知られているものの,それに関する解析的な研究はあまり行われてきていない。植物細胞の特徴の一つは,巨大な液胞を持つことであり,液胞が哺乳動物細胞ではオートファジーの中心的役割を果たしているリソソームに相同なオルガネラであることを考えると,液胞とオートファジーの関係は興味深い。さらに植物細胞においては,液胞そのものがオートファジーによって形成されるという説がある。成熟した植物細胞に存在する大きな液胞は,細胞体積の9割以上を占め,植物細胞の伸長・拡大と直接関連するオルガネラであるので,オートファジーは植物の生長・発生に多種多様なかたちで寄与している可能性も考えられる。また,近年のシロイヌナズナ全ゲノム解析により,酵母で見つかっているオートファジーに必須の遺伝子の多くについて,それらのホモログが植物にも存在することがわかってきた。最近,酵母におけるオートファジーに必須の遺伝子であるAPG9やAPG7のホモログ遺伝子が破壊されたシロイヌナズナT-DNA挿入変異株の表現型が調べられ,植物個体におけるオートファジーの生理的意義が議論されている。本稿では,植物におけるオートファジーの役割について概説する。
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