Japanese
English
特集 脳の深部を探る
視床におけるコリン作動性投射の生後発達
Postnatal development of cholinergic afferents in the thalamus
車田 正男
1
,
星野 嘉恵子
1
Masao Norita
1
,
Kaeko Hoshino
1
1新潟大学大学院教育研究院医歯学系感覚統合医学講座神経生物・解剖学部門
pp.605-608
発行日 2004年12月15日
Published Date 2004/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100656
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脚橋被蓋核(PPT)は背外側被蓋核(LDT)とともに脳幹におけるコリン作動性投射線維の主な起始部位である1)。PPTは網様体賦活系の一部で,さまざまな感覚系,運動系に対する興奮性投射を示し,知覚や認識過程において不可欠とされる2)。視床は豊富なコリン作動性線維により支配されていることが知られており3),また,例えば外側膝状体のコリン作動性投射による影響については多くの報告が成獣でなされている。さらに,発達段階での影響についてもいくつかの重要な所見が示されており,脳幹から外側膝状体へのコリン作動性投射のタイミングおよびコリン作動性シナプスの始まりは,広範囲な発育や外側膝状体回路の生後発達における改造を受ける網膜膝状体終末分枝の成熟に重要なかかわりを持つ可能性がある4)。一方,視・運動機能に関わるとされる視床連合核の内側外側核・膝上核(LM-Sg)も脳幹からのコリン作動性投射を受けることが報告されている5)。また,PPTと基底核出力系(淡蒼球,黒質など)との相反連絡はよく知られており,注意行動などにある重要な役割があると考えられているが,PPTニューロンの行動制御における機能的役割については十分理解されたとはいえない。しかしPPTの破壊によりREM睡眠時の眼球運動頻度が減少すること,サッケード運動調節に関わる前頭眼野や黒質網様部がPPTに投射していることなどが示されていることから,PPTはサッケードなどの眼球運動調節に関わる可能性が示唆される6)。本稿では主に視床連合核であるLM-Sgへのコリン作動性投射およびシナプス糸球体の生後発達を提示し,それらの機能的意義について考察する。
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