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Ca2+は細胞内においてセカンドメッセンジャーとして働き,細胞外からの様々な刺激はCa2+シグナルに変換される。即ち,細胞内のCa2+濃度は低く保たれているが,外部刺激に伴い急激にCa2+濃度が上昇する。その際に細胞外からのCa2+流入を制御しているのがCa2+チャネルである。Ca2+チャネルは電位依存型・リガンド作動型・受容体活性型に大別される。TRPチャネルはその中でも受容体活性型を担っていることが明らかにされた。それに加え,最近は細胞内外の環境変化を感知するバイオセンサーとしてTRPチャネルは着目されており,本稿ではそれを中心に紹介させて頂く。
trp(transient receptor potential)はショウジョウバエの光受容体変異株の原因遺伝子として発見された。trp変異株は光受容体電位変化が一過的(transient)であることから命名され,後にtrp遺伝子はCa2+チャネル蛋白質(TRP)をコードしていることが明らかとなった。遺伝子解析の結果,多くの脊椎動物にもTRPホモログが発見され,遺伝子の相同性から現在六つのファミリーに分類されている(図1a)。TRPCファミリーはショウジョウバエTRPと最も相同性が高いグループであり,受容体刺激によるホスファチジルイノシトール応答を介して活性化される。TRPVファミリーは唐辛子の辛み成分であるカプサイシンに反応して活性化するvanilloid receptor(TRPV1)およびそのホモログである。TRPMファミリーはメラノーマ(悪性黒色腫)細胞の腫瘍の悪性度に反比例して発現量が減少するTRPM1およびそのホモログ,TRPPファミリーは多発性嚢胞腎の原因遺伝子の一つであるPKD2およびそのホモログ,TRPMLファミリーは先天代謝異常症(4型ムコリピドーシス)の原因遺伝子であるTRPML1およびそのホモログである。ごく最近,N末端に14回連続したアンキリンリピート配列を有するANKTM1を含むTRPAファミリーが加わった。
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