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細胞内脂質結合タンパク分子(ILBPs)ファミリーは,分子量14~15kDaの低分子量細胞内タンパク群で,これまで12種類におよぶタンパクが同定されている。ILBPsは脂肪酸,エイコサノイド,胆汁酸などに結合能を有し,細胞内機能としてはリガンドである脂質の細胞内取り込み,脂質代謝経路への運搬1),脂質情報伝達の制御2)などが考えられている。脳型脂肪酸結合タンパク(B-FABP,BLBP,FABP7,本稿ではB-FABPとする)はILBPsファミリーに属し,他のILBPsとのアミノ酸構造上の類似性は,低いもので28%(肝臓型脂肪酸結合タンパク:L-FABP),高いもので67%(心臓型脂肪酸結合タンパク:H-FABP)と多岐にわたるが,タンパクの3次元構造は非常によく保存されており,10本のβ鎖と2本の短いαへリックスによって構成されている3)。
B-FABPは神経系ではアストロサイトや放射状グリアなどのグリア系細胞に主に発現し,放射状グリアにおける発現は神経細胞の分化や移動に緊密な関連をしめすことから,B-FABPが神経系細胞の分化や移動に必要な長鎖多価不飽和脂肪酸の貯蓄や供給などに関わる制御分子として機能することが想定されている4-6)。Fengらは,小脳の培養放射状グリア細胞において,B-FABPの抗体投与によりグリアの突起伸張が抑制されたことを報告している4)。一方,シュワン細胞においては,坐骨神経の圧挫時に発現の増強がみられ,B-FABP抗体投与により培養シュワン細胞の突起伸張が促進されることが示されている7)。また,ヒトのグリオーマにおけるB-FABPの発現はGFAPの発現とよく一致し,より高分化型の腫瘍に発現していることが示されている8)。以上より,B-FABPはグリア系細胞の突起の伸展を含めた分化過程の制御に関与していることが示唆されているが,放射状グリアとシュワン細胞で,なぜ全く逆の反応が見られるのかなど,その詳細な機序解明については今後の検討が待たれる。また神経系以外では,肝臓のクッパー細胞9)や乳腺上皮細胞10)に発現していることが明らかになっているが,その生理的意義については不明な点が多い。
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