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尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白
池森 敦子
1,2
,
菅谷 健
2
,
木村 健二郎
2
1聖マリアンナ医科大学解剖学教室
2聖マリアンナ医科大学腎臓高血圧内科
pp.129-131
発行日 2010年2月1日
Published Date 2010/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102746
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はじめに
慢性腎疾患(chronic kidney disease,CKD)は,進行すると末期腎不全となり,透析療法が必要となる.現在,透析患者は,27万人を超え,さらに年間約1万人の割合で増加しており,今後も増え続けていくことが予想される.また透析医療費は,年間1兆円を超えており,透析療法は,患者個人の肉体的・精神的負担のみならず医療支出の増大など,社会的・経済的問題となっている.しかしながら,CKDは,進行が緩慢で,経過が長期間にわたることから,臨床治験の実施が困難であり,新薬開発が極めて難しい分野である.そのため,末期腎不全患者を減少させるためには,CKDが進行する危険の高い患者を早期に見つけ,迅速に生活指導,栄養指導,薬物療法といった多方面からの治療を集学的に行うこと(集学的治療)が重要である.
CKDの進行が予想される患者を判別しうる有用なバイオマーカーは,現在のところない.筆者らは,そのようなバイオマーカーを探索し,その結果,尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白(liver type fatty acid binding protein,L-FABP)が従来のマーカーと異なり,CKDの進行を予測する優れた臨床マーカーであることを明らかにした.さらに,最近になり,その有用性は,海外でも注目されるようになっている.
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