特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
6.免疫学
ユビキチン化によるMHC class Ⅱの発現制御
松木 洋平
1
Yohei Matsuki
1
1理化学研究所免疫・アレルギー総合科学研究センター感染免疫応答研究チーム
pp.456-458
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100557
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近年,ウイルスのE3ユビキチンリガーゼとそれらの哺乳類における相同分子からなる新たなE3ユビキチンリガーゼファミリーが見出された。このファミリーメンバーはすべて,その中心に二つの膜貫通領域と,アミノ末端にE3ユビキチンリガーゼの触媒活性ドメインであるRINGv(really-interesting-new-gene-valiant)ドメインを持った膜結合型のE3ユビキチンリガーゼである。これらのE3ユビキチンリガーゼを過剰に発現させると,ユビキチン化によってターゲットとなる様々な細胞膜表面に存在するタンパク質の発現が減少する。このファミリーに属するMARCH-Ⅰと呼ばれるE3ユビキチンリガーゼが,抗原提示細胞からCD4 T細胞への抗原提示に必須の分子であるMHC class Ⅱ(MHCⅡ)をターゲットとすることが明らかとなった1)。抗原提示細胞が発現するMHCⅡの機能やその量に異常をきたすと,病原体を体内から効率よく排除できなくなり,重症な感染症となる。また,MHCⅡは自己免疫疾患の発症にも関連すると予想される。このことから,MARCH-ⅠはMHCⅡのユビキチン化を通じて発現量を制御し,免疫応答を調節していると考えられる。そこで,生体内におけるMHCⅡのユビキチン化による発現制御の分子メカニズムについてわれわれが得てきた知見を紹介し,その意義について考えたい。
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