特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅱ.チャネルに作用する薬物
Na+チャネル
瀬山 一正
1
Issei Seyama
1
1広島大学医学部第一生理学講座
pp.433-436
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901630
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Naチャネルは限られた時間に細胞外から内へ電気化学ポテンシャルに従ってNa+を通す,細胞膜に組み込まれた蛋白質でできた装置である。この装置によって最も速い信号が発生し,神経系,骨格筋,心筋の機能を制御することが可能となっている。40年前に,HodgkinとHuxleyによって著されたNa説は,今日でもあらゆる興奮細胞の活動についての基本的な枠組みとなっている。Na説によるとNa+チャネルは膜電位が脱分極すると,イオンの透過を制限しているゲートが開く(活性化)が,膜の脱分極が持続してもゲートは閉じてイオンが透過しない状態(不活性化)に移行する。また,ゲートは膜電位変化によって急激な開閉を起こすので,ゲート機構の働く前に膜電位変化に応じて荷電の多い粒子かまたは双極子が膜内で移動する機構が存在すると推測している。
1984年に沼研究室から電気ウナギの電気器官のNaチャネルの一次構造に関する論文が世界に先駆けて発表された。それ以来,この蛋白質について機能一構造相関の研究が分子生物学的方法を用いて急速に進展しつつある。膜電位依存性Na+チャネルは約240-280KDのαサブユニットに,約30KDの二つのβサブユニットをともなっていることが明らかになった。主要なチャネル機能であるイオン選択性とゲート機構はαサブユニットにあるが,βサブユニットはチャネル機能の修飾を行っている。
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