特集 DOHaDと周産期医療
DOHaDと周産期医療:母体合併症・管理とDOHaD
葉酸の欠乏と過剰
樋浦 仁
1
HIURA Hitoshi
1
1東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科動物発生工学研究室
pp.1520-1523
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001785
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はじめに
1980年代後半にBarkerらは低出生体重児が心筋梗塞,高血圧,2型糖尿病,肥満といった生活習慣病の発症率が上昇することを疫学調査で明らかにし,胎児プログラミング説を提唱した1)。その後,Lucasは胎児期のみならず乳幼児期においてもプログラミングが起こる可能性を提唱し2),現在ではdevelopmental origins of health and disease(DOHaD,成人病胎児起源説)として注目されている。DOHaDの制御機構として,DNAの配列変化を伴わない遺伝子発現制御機構(エピジェネティクス)が「細胞の記憶」として関与していると考えられている。また,妊娠期の葉酸不足は胎児の二分脊椎症や無脳症など神経管閉鎖障害(neural tube defects:NTDs)のリスクであること,さらに葉酸が受精率の向上に関わっていることが示唆されている。さらに,妊娠前後の葉酸サプリメントの摂取は先天性心疾患,早産,低出生体重および子どもの死亡率と罹患率に関連する健康問題のリスクを減少させることも示唆されている3)。
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