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特集 構造生物学の現在と今後の展開
「蛋白質がわかる」ための理論と計算の役割
Role of theory and computation for “understanding protein”
郷 信広
1
,
米谷 佳晃
2
Nobuhiro Go
1
,
Yoshiteru Yonetani
2
1日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門
2科学技術振興機構CREST
pp.626-631
発行日 2005年12月15日
Published Date 2005/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100422
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1 蛋白質がわかるということ
蛋白質分子は20種のアミノ酸が特定の配列で一列につなぎ合わされた線状の高分子で,細胞内の特定の環境下で,アミノ酸の配列で定まる特定の立体構造に折りたたまれ,機能を発揮する。特定の立体構造を持つ状態は天然状態と呼ばれる。この状態において,立体構造は詳細に見ると平均構造のまわりに複雑な動きを示しており,その動きや分子間の相互作用を通して分子は機能を発揮する。
アミノ酸配列は,生物進化の過程で繰り返されてきた突然変異と淘汰によって選び出されてきたものである。突然変異は多くの場合,1アミノ酸置換をもたらす。その置換は,配列によって定まる特定の立体構造とその安定性に影響を及ぼし,さらに平均構造のまわりの運動や分子間相互作用に影響をもたらすことにより機能に影響する。生物個体にとってその構成要素である蛋白質分子の存在理由は,分子が発揮する機能にかかっている。したがって,突然変異によってランダムに引き起こされる個々のアミノ酸置換によって,機能がそれぞれどのように影響を受けるかがわかれば,蛋白質分子が理解できたと考えてよいのではないか。
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