今月の主題 蛋白質の活性と蛋白量
巻頭言
蛋白質の活性と蛋白量
菅野 剛史
1
Takashi KANNO
1
1浜松医科大学
pp.927-928
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904851
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蛋白質は生体成分を構成し,生物活性を持った高分子化合物である.ある場合には生体の構造を保つ物質であったり,生体の代謝をつかさどったり,形態機能を制御する情報伝達に関与したり,多くの機能が知られている.そして,臨床検査の領域では,疾病の診断の目的に,生体の機能の状態を知る目的で,機能回復の予測などを目的として蛋白質の定量が広く行われている.しかし,この測定法には大別して蛋白質の構造を免疫学的に認識して定量する場合と,蛋白質のもつ酵素活性などを活性として捕らえ定量する場合とに大別できる.そして,この2つの方法はそれぞれ特徴があり,かつその特徴を十分に理解しないと上手に利用することはできない.
まず,免疫学的測定法であるが,この方法は被測定物質に対しての抗体を作製し,抗原抗体反応を利用して結合した非測定物質を定量する方法であり,抗体を標識することにより蛍光測定,化学発光,生物発光と超高感度の測定系を組み立てることができる.すなわち,蛋白質の量を測定するシステムである.しかし,抗体にモノクローナル抗体を利用した場合には,エピトープが遺伝性変異などで構造などが異なった場合に抗原抗体反応に変化をもたらし,十分測定できない場合も考えられる.さらに,エピトープは存在するが,蛋白として不完全な構造を取った場合などは,測定はできても作用しない蛋白が測れたことになる.臨床症状と矛盾する測定値が得られてしまうことになり検査のピットホールになってしまう.
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