Japanese
English
連載講座 個体の生と死・33
高齢者の知的能力
Intellectual functionings among the elderly
中里 克治
1
Katsuharu Nakazato
1
1岩手県立大学社会福祉学部
pp.65-69
発行日 2005年2月15日
Published Date 2005/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100370
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Ⅰ. 知能とは
知能についてはさまざまな考え方があり,研究者ごとに定義が違うとさえいわれている。代表的な知能検査を作ったWechslerは,知能を「目的にあった行動をし,合理的に考え,環境からのはたらきかけに効果的に対処する能力」と定義している。
知能は全体として一つの因子を構成するものとも考えられるが,同時に,いつくかの能力で構成されるものと考えることもできる。Cattell1)は,知能は流動性知能因子と結晶性知能因子という二つの一般因子で構成されるという説を提案した。流動性知能因子は,新しいことの学習や新しい環境に適応するために必要な問題解決能力である。大脳の生理的な面との結びつきが強く,加齢や脳の器質的障害の影響を受けやすい。これに対し,結晶性知能因子は蓄積した経験を生かす能力であり,学校教育や仕事などのさまざまな経験の蓄積によって育てられていく能力である。結晶性知能因子は加齢や脳の器質的障害の影響を受けにくい。WAIS-Rなどの知能検査では,おおよそ言語性検査が結晶性知能因子を,動作性検査が流動性知能因子を測ると考えられている2)。
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