Japanese
English
調査
脳血管障害における排泄の障害―知的能力との関係について
A Study of Relationship between Mental Ability and Incontinence in Patients with Cerebrovascular Disorders.
倉永 史俊
1
,
甲斐 忠和
1
,
下江 忍
1
,
西丸 静美
1
,
吉村 美佳
1
,
林 拓男
2
Fumitoshi Kuranaga
1
,
Tadakazu Kai
1
,
Shinobu Shimoe
1
,
Shizumi Nishimaru
1
,
Mika Yoshimura
1
,
Takuo Hayashi
2
1広島県立ふれあいの里老人リハビリテーションセンター
2公立みつぎ総合病院理学診療科
1Hiroshima Prefectural Fureai-no-sato Rehabilitation Center for the Aged
2Department of Rehabilitation Medicine, Mitsugi General Hospital
キーワード:
脳血管障害
,
排泄
,
知的能力
Keyword:
脳血管障害
,
排泄
,
知的能力
pp.311-314
発行日 1993年4月10日
Published Date 1993/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107337
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はじめに
排泄の自立は脳卒中のリハビリテーション上,重要な問題である.排泄の自立のためには下部尿路機能だけではなく,排泄感覚,移動能力を含むADL上の問題などさまざまな要因が関わっている.さらに知的能力の低下が見られる場合にはますます排泄の自立が困難になるものと考えられている.
下部尿路機能と知的能力の関係についてはすでに三島ら1)がWAISによる知能テストでIQ60以上の者とそれ以下の者で排尿障害の頻度に有意な差はなかったと報告しているほか,正門ら2)は長谷川式スケールとの関係でも差は見られなかったと報告している.
排泄感覚については動作的に自立しているにせよ,介助を受けるにせよ,確実な排泄感覚(いわゆる尿便意がはっきりしているかどうか)が排泄自立のための前提条件となる.さらに失敗なく排泄を行うには,知覚から行為に至るプロセスの認知やそれに要する時間の予測あるいはその場の的確な状況判断なども必要とされ,そこには知的能力が深く関与しているものと考えられる.川平ら3)は長谷川式スケールを用いて知的能力の評価を行い,運動能力および知能のレベルにより排泄様式に違いが見られたと報告しているが,その他に知的能力と排泄の自立の問題についての報告はまれである.
そこで今回われわれは脳卒中後遺症による障害老人に対し,知能テストの一つであるコース立方体テストを行い,その得点と排泄自立のために知的能力が要求されると思われる尿便意の確実性との関係について検討した.すなわち動作的能力障害のために介助が必要であるか否かは問題とせず,確実に尿便意を訴え排泄の失敗がなければ自立として考えた.
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