特集 生物進化の分子マップ
20.収縮タンパク
ナメクジウオ脊索に見る筋肉タンパクの進化
和田 洋
1
,
佐藤 剛毅
1
,
鈴木 美穂
2
Hiroshi Wada
1
,
Gouki Satoh
1
,
Miho Suzuki
2
1筑波大学大学院生命環境科学研究科
2エディンバラ大学
pp.494-496
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100328
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われわれの祖先は,脊椎骨を獲得して脊椎(せきつい)動物となる前夜,初期カンブリア紀に脊索(せきさく)動物として姿を現す。その姿はグールドの「ワンダフルライフ」で有名になったピカイアや,最近,中国の澄江で発掘されたハイコウエラなどに見ることができる1)。脊索動物は,左右に並んだ筋肉を交互に収縮させることで体をくねらせて泳ぐようになった動物であり,この体制には,体の中心軸を走る脊索の獲得が不可欠であった。脊索を獲得した後に,脊椎骨が脊索や神経管を取り囲んで中心軸の強度を増すことに成功したものが脊椎動物である。その結果,脊椎動物は体の大型化に成功し,陸や空へとニッチを拡げていくことができた。脊椎骨は沿軸中胚葉に由来する硬節細胞から形成され,脊索よりは筋肉などと近い系譜の細胞から生み出されている。
ナメクジウオの脊索は,脊椎動物が脊椎骨により強度を増していったこととは全く異なった方向に進化を遂げた。現生のナメクジウオは発達した筋節を有しているが,マグロやカツオのように活発に泳ぎ続けているわけではない。むしろ大半の時間を砂の中に潜って過ごしている。砂に潜る際にナメクジウオは頭の方からも,尾の方からも潜ることができる。そのような行動に適応してか,脊索が神経管の先端を超えて,頭部の先端まで伸びている。このナメクジウオの脊索細胞には左右に筋線維が走っており,背側に位置する神経管に突起を延ばして,神経支配により収縮することで,硬さの調節を受けると考えられている(図1)2)。
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