基礎から応用へ
ナメクジウオから人間へ・3
佐藤 やす子
1
1横浜市大・第2解剖
pp.24-27
発行日 1974年6月1日
Published Date 1974/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200474
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この前の号で,哺乳類には,これより以下の脊椎動物には見られなかった大脳新皮質が発達していることについて簡単にふれた.
人類はかつての爬虫類のように,地球上のいたる所で生活し現在みるように繁栄している.これは他の哺乳類と同じ意味で,言いかえれば自然環境に消極的に適応できる能力を持っているうえにさらに積極的に環境に対処できる能力つまり知能を備えているからと言える.ヒトはその知能を働かせて,外界へ適応している.この形態的な"場"が,大脳新皮質であって,ヒトで最もよく発達している.ことにそのうちでも,前頭葉と名づけられている部位は,いわゆる"思考の座"であってヒトに個性を与え,彼らが創造した文明と社会集団の中で,個人としてふるまわせている.いわばヒトという哺乳類の生活様式を,最も優位な立場にたって統合調節している部位といえる.
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