基礎から応用へ
ナメクジウオから人間へ・4
佐藤 やす子
1
1横浜市大第2解剖
pp.24-27
発行日 1974年7月1日
Published Date 1974/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200502
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1.人類の出現
"腕わたり"のへたな無尾猿類ドリオピテクスのあるものが地上に降りたって,やがてヒトへの進化の道を歩みだしたこと,そして第4紀洪積世前期すなわち,およそ今から200万年前に人類の祖先オーストラロピテクス(Australopithecus)が出現したことについては,前号で述べたとおりである.
この間に,人類は直立2足歩行を確立し,上肢は運動器としての役目から開放されたのであるが,最も重要な変化は,脳頭蓋の容積がその後の人類の進化に伴って急速に増大したことである.オーストラロピテクスの脳頭蓋の容量は500〜600mlで,これは現存のゴリラとほとんど変わらない.しかし洪積世中期の前半,すなわち60〜40万年以上前の地層から発見されたホモ・エレクトゥス(Homo erectus)*と総称される先祖になると,はるかに大きい脳の所有者となっていたことが,脳頭蓋の平均容量1,000mlということから推測される.さらに40〜15万年以上前,つまり中期の後半ごろにはネァンデルタール(Homoneanderthalensis)人が,そして洪積世後期の前半,今から5〜3万年前になるとクロマニヨン(Crô-Magnon race)人が出現するが,彼らの脳頭蓋の様子から,脳はほぼ現存する人類(Homosapiens)**の脳の大きさ(1,500ml前後)と形態に近づいてきたことがうかがわれる.
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