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オキシトシン(OT)とバソプレッシン(VP)は,哺乳類の下垂体後葉から分泌されるホルモンで,OTは子宮筋収縮や乳汁分泌など生殖機能,VPは血管収縮と抗利尿など体液調節に重要な役割を果たす。脊椎動物はOTとVPに構造の類似した二種のペプチドをもつ。C末端から二番目が中性アミノ酸のものはイソトシン-メソトシン-OT系統,また塩基性アミノ酸のものはバソトシン-VP系統に分類される。また,アミノ酸の極性の違いが受容体との特異的相互作用を決定する1)。脊椎動物で最も原始的な無顎類がバソトシンだけをもつことから,約5億年前,無顎類と有顎類が分岐したとき祖先型遺伝子が重複をおこし,二つのファミリーが進化し,スーパーファミリーを形成したと考えられている1)。無脊椎動物からもバッタのロクプレシン,ミミズのアネトシン,そして巻き貝とアメフラシのLys-コノプレシンなどが発見されている。脊椎動物と異なり,無脊椎動物には,一種の動物に一方のファミリーに属するペプチドだけが存在し,そのペプチドがOT様とVP様の両方の機能を兼ね備えるとされてきた。また,スーパーファミリーの共通の祖先は約6億8,000万年前,新口動物と旧口動物が分岐したとき,すでに存在したと考えられている1)。
アネトシン(AT)はミミズの体節にある腎管の収縮物質として単離された2)。AT前駆体の基本的な構造はシグナル配列,ペプチドの配列,C末端アミド化と切断シグナルである-Gly-Lys-Arg-配列,およびニューロフィジン配列からなり3),スーパーファミリー前駆体の基本構造と同様である。ニューロフィジンは14個のCys残基が形成するジスルフィド結合によって安定な立体構造をとり,分泌顆粒の中でペプチドと結合してそれを保護する。AT前駆体のニューロフィジン配列にあるCys残基の数や位置が一致している3)(図1)。
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