特集 ホルモンの病態異常と臨床検査
各論Ⅰ ホルモンの病態異常と検査
2.下垂体後葉
2) オキシトシン
五十嵐 秀樹
1
,
網田 光善
1
,
倉智 博久
1
Hideki IGARASHI
1
,
Mitsuyoshi AMITA
1
,
Hirohisa KURACHI
1
1山形大学医学部発達生体防御学講座女性医学分野
キーワード:
子宮筋収縮作用
,
社会行動
,
母性行動
Keyword:
子宮筋収縮作用
,
社会行動
,
母性行動
pp.1212-1216
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101757
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はじめに
オキシトシン(oxytocin;OT)は9個のアミノ酸から成るペプチド(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)で末梢組織ではホルモンとして,中枢神経では神経伝達物質,神経調整物質として作用する.その構造は二つのシステイン(Cys)を含み,それぞれの硫黄原子が結合して(ジスルフィド構造),大きな環を作っている.同じく下垂体後葉ホルモンであるバソプレシン(Cys-Tyr-Phe-Gln-Asn-Cys-Pro-Arg-Gly)と構造が似ており,アミノ酸が二つ違うだけである.OTは視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で,輸送蛋白質であるニューロフィジンI(neurophysin I)に結合した不活性前駆体として合成され,神経細胞内を軸索輸送され,下垂体後葉に蓄えられている.そして種々の刺激に対し,下垂体後葉から分泌され,様々な臓器のオキシトシン受容体(OT-R)に結合し,その作用を発揮する(図1)1).また,OTの遺伝子がクローニングされ分子生物学的手法による解析が進んだ結果,OTは下垂体後葉だけでなく,子宮,胎盤,羊膜,黄体,精巣,心臓など末梢組織でも産生されることがわかった.しかし,子宮など一部の組織を除き,各組織でのOTの作用は十分に解明されていない(表)2).本稿ではOTの末梢組織(子宮,乳房),中枢神経での作用とその役割について概説する.
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