特集 生物進化の分子マップ
3.生物の起源
真核生物の起源の解明―古細菌ピロコッカスの真正細菌γプロテオバクテリアへの共生
篠沢 隆雄
1
,
堀池 徳祐
2
,
宮田 大輔
3
,
濱田 一男
4
Takao Shinozawa
1
,
Norihiro Horiike
2
,
Daisuke Miyata
3
,
Kazuo Hamada
4
1早稲田大学大学院理工学研究科生命理工学専攻
2国立遺伝学研究所生命情報研究センター
3千葉商科大学商経学部
4ラジエンスウエア株式会社
pp.358-359
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100261
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真核生物の起源―古細菌の真正細菌への共生
真核生物の誕生は,生命の歴史38億年の中で10数億年を要した一大イベントである1-3)。1989年,岩部らにより,真核生物のEF-1αとEF-2はそれぞれ古細菌と真正細菌の分岐以後に古細菌のEF-Tu,EF-Gから分岐したことが示された4)。しかし,後にほかの遺伝子の系統樹解析から多くの矛盾する結果も報告された。Brown & Doolittleは真核生物,真正細菌,古細菌の系統関係を示す339報に及ぶ様々な遺伝子の系統樹解析の報告から系統樹をいくつかのパターンに分類し,結論を導く難しさを議論している5)。われわれは,真核生物である酵母と多数の原核生物の全ゲノム情報から遺伝子の類似度を網羅的に相互比較できる「ホモロジーヒット法」を開発した6)。そして,真核生物の核(遺伝子情報)関連の遺伝子群は古細菌由来,ミトコンドリア関連遺伝子を除く代謝遺伝子群は真正細菌由来,ミトコンドリア関連遺伝子はαプロテオバクテリア由来であることを示した6,7)(図1)。この結果より,Lake8)とMoreira & Garcia9)が提案した真核生物の核は古細菌の真正細菌への共生に由来するとする説が証明された6,7,10)。
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