特集 生物進化の分子マップ
11.酵素
真核生物におけるGAPDH遺伝子の複雑な進化
瀧下 清貴
1
,
石田 健一郎
2
,
丸山 正
1
Kiyotaka Takishita
1
,
Ken-ichiro Ishida
2
,
Tadashi Maruyama
1
1海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター
2筑波大学大学院生命環境科学研究科
pp.410-412
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100287
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グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(glyceraldehydes-3-phosphate dehydrogenase:GAPDH)はカルビンサイクルや解糖/糖新生系において機能し,この酵素をコードする遺伝子は,真核生物の進化研究における系統マーカーとして比較的よく調べられている。
本稿で扱うGAPDH遺伝子は大きく二つのグループに分けられる。一つは真核・細胞質型のGapCタイプで,もう一つは真正細菌型のGapA/Bタイプである。一次共生由来の葉緑体を有する緑色植物(緑藻類+高等植物)や紅藻類は両方のGAPDH遺伝子を核にもっており,GapCは細胞質のGAPDHを,GapA/Bは葉緑体内で働くGAPDHをそれぞれコードしている。それらのGapA/Bは,ラン藻類が有するGAPDHの一つと近縁であることから(図1),一次共生による葉緑体の獲得に伴ってラン藻類から宿主核に転移した多くの葉緑体タンパク質遺伝子の一つであることが容易に想像できる。ところが紅藻類を起源とする二次共生由来葉緑体(従属栄養性真核生物が真核藻類細胞を取り込むことで獲得された葉緑体)をもつ真核生物では状況が異なる。
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