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特集 嗅覚受容の分子メカニズム
嗅細胞の神経個性と回路形成
Neuronal identity and circuit formation in the mouse olfactory system
坂野 仁
1
Hitoshi Sakano
1
1東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻
pp.256-263
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100043
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高等動物は外界からの様々な情報を五感を介して識別し行動している。その中で嗅覚・味覚など化学情報の受容は,線虫やハエ,さらにはマウスやラットに至るまで広く研究されており,生存に不可欠な求餌,毒物や天敵に対する忌避,フェロモンを介した性識別や生殖行動などで中心的役割を果たしている。
ヒトやマウスの嗅覚受容体(odorant receptor:OR)遺伝子は, 免疫系の抗体遺伝子同様, 一つの細胞において1種類の受容体遺伝子が,父親と母親,それぞれに由来する二つある対立形質の一方からのみ発現するというきわめてユニークな発現様式をとっている。また,嗅細胞の嗅球への軸索投射は,個々の細胞が発現するOR分子の種類によってその位置が規定され,嗅球上の投射先である糸球構造(glomerulus)とORの間には1:1の対応関係が成り立っている。したがって匂い情報が嗅上皮から入力されると,嗅球表面にはちょうど1000個の糸球を素子とする電光掲示板のように,濃淡を含む糸球の発火のパターンが形成され,この匂い地図によって匂いの種類と質を脳が識別すると考えられている。この匂い情報の二次元変換は1神経・1受容体(one neuron-one receptor)および,1糸球・1受容体(one glomerulus-one receptor)という,二つの基本ルールによって支えられているが,本稿ではこれらルールの分子基盤について最近の進歩を紹介する。
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