特集 ホスピタリストのための精神科の知識
【コラム⑨】患者の判断能力をどう評価する?—意思表示の背後にある多様な文脈を理解し,支援アプローチを考える
高松 直岐
1
,
久我 弘典
1
Naoki TAKAMATSU
1
,
Hironori KUGA
1
1国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター
pp.834-843
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120040834
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精神疾患を抱える患者では,治療の中止や拒否に関する意思決定に際し,判断能力の評価が臨床現場で極めて重要な課題となる。特に,うつ病患者では認知機能障害や抑うつに伴う悲観的な思考が意思決定に影響を及ぼすため,包括的なアプローチが求められる。
本稿では,意思決定能力の評価における4つの基本要素(理解力,認識力,論理的思考力,選択の表明)の実践的な評価方法を提示し,うつ病患者に特有の機能障害や時間的展望の障害に着目する。また,透析継続拒否を示した対照的な2症例を通して,「治療拒否」という意思表示の背後にある多様な文脈を理解することの重要性を示し,多職種連携に基づく具体的な支援アプローチについても考察する。これらの知見は,透析に限らず,人工呼吸器の離脱やDNAR(Do Not Attempt Resuscitation)など,生命維持治療に関する意思決定支援全般の実践に寄与すると考える。

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