特集 薬物治療の質向上
Part 2 薬物治療を適切に個別化するための基本知識
8.腎不全患者の薬剤投与—個別化を適正に行うために
柴田 啓智
1
Akitomo SHIBATA
1
1済生会熊本病院 薬剤部
pp.303-307
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120020303
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腎不全患者の薬剤投与量を決定するためには,腎機能を評価する必要がある。
腎機能は糸球体濾過量glomerular filtration rate(GFR)で表される。検査項目として表記される推算糸球体濾過量(eGFR)は診断基準であり,体表面積で補正されているため,患者個別の薬剤投与設計には適さない場合がある。イヌリンクリアランスは最も正確にGFRの評価が可能であるが,測定には煩雑な手技が伴うため,実臨床ですべての患者には実施することはできない。多くの症例では,血清クレアチニン(Cr)値をもとにした腎機能推算式であるCockcroft-Gault(CG)式による推算クレアチニンクリアランス(CCr)や,日本人向けのeGFRが用いられている。ただし,それぞれに正確な評価を妨げるピットフォールがあり,その点を回避しながら腎機能評価を行うことが重要である。
また薬剤の特性として,腎機能の影響を受けやすい腎排泄型や,影響を受けにくい肝代謝型があり,その特性を見極めることが求められる。さらに,血液透析など医療機器を用いた場合には,患者の腎機能にこれら医療機器による薬剤除去を加味して考慮する必要がある。
本稿では,臨床における腎機能評価とその注意点,血液透析など医療機器による薬剤除去の考え方について概説し,患者に対して薬物療法を適正に個別化する手法について論述する。

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