特集 輸血のすべて
Part 2 血液製剤の使用
【コラム③】ヒトはどこまで貧血に耐えられるか?—赤血球輸血の目的である「酸素需給バランス」の視点から
足立 一真
1
,
宇賀田 圭
1
,
田邊 翔太
2
Kazumasa ADACHI
1
,
Kei UGATA
1
,
Shota TANABE
2
1松江赤十字病院 集中治療科
2松江赤十字病院 救急部
pp.62-68
発行日 2024年12月1日
Published Date 2024/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120010062
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貧血は日常診療で頻繁に遭遇する病態である。貧血患者への赤血球輸血は世界中で行われている1)が,読者の皆様は輸血についてどのようにお考えだろうか。その輸血は何のために行うのか? ガイドラインに書いてあるから? ガイドラインでは輸血の基準に「ヘモグロビン(Hb)<7.0g/dL」を頻用しているが,この値はこれまでの研究結果2〜5)を参考にしたものに過ぎず,輸血の本質的な必要性を伝えるものではない。『Marino's the ICU book』の著者であるMarino医師の言葉を借りると,「貧血を補正するためにHb濃度のみを指標に輸血を行うのは誤った医療行為である」。実際にHb 7g/dL未満でも日常生活が可能な患者は多く存在する。
輸血を行うならば,貧血を補正することで何を期待するのか,明確な目的が必要である。人間にはホメオスタシスを維持するための代償機構が備わっており,貧血に対しても例外ではないが,それには限界がある。「ヒトはどこまで貧血に耐えられるか?」を考えていくなかで,貧血の背景にある生理学的な仕組みを理解し,読者の輸血に対するリテラシーが高まることを期待する。
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