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はじめに
アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)の病態の根幹の1つを構成するアミロイドβに対する抗体療法が可能となったことで,認知症の治療は新たな段階に入った。臨床的にも診断精度が向上し,画像だけでなく体液のバイオマーカーの進歩は目覚ましく,これからは非侵襲でより低コストに認知症の臨床診断ができる時代がやってくる。
ただ,認知症患者を診療するときに気になることは,目の前の患者の脳でどのようなことが起きているかということである。多少なりとも神経病理を行っていると,自分の診療や検査をもとに診断をしても,いま一つ信用できない。例えば,アミロイドPET検査で臨床的にADと診断をしても(一般的にそうなっている印象だが),ではAD診断に必須である神経原線維変化(タウ)は,どのように脳内に広がっているのかは臨床的には判断は難しい。タウPETを行ったりすることも研究で可能だろうが,一般診療で全例に行うことはできない。高齢者の脳には,ADでみられる神経病理変化(AD neuropathologic change:ADNC)だけが生じるわけではない。嗜銀顆粒の沈着,Lewy小体,脳血管病変に加えて,近年ではTDP-43によるLATE(limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy)という病態も発見され1),特にLATEがあると認知機能障害の進行も速いと言われている。
認知症の患者を診療するということは,アミロイドβの抗体療法の適応を決めることだけではなく,個々の患者の脳内に生じていることを多角的に理解し,かつ詳細に検討を加え,また時間的な変化も合わせて診療に関わるということであろう。その中で,神経原線維変化型老年期認知症は重要な病態であり2-8),特に高齢化が進む日本では十分に理解しておかなければならないものである。

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