連載 職場のエロス・17
食い逃げ松ちゃん
西川 勝
1
1京都市長寿すこやかセンター
pp.90-91
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900731
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久しぶりに後輩と会った。大阪駅の近くで待ち合わせて喫茶店に行く。10年以上前,一緒に男子閉鎖病棟で働いていた男だ。彼は,ぼくが辞めてからの病院の話をあれこれとする。どうでもいいやと,上の空で聞いていた。が,松ちゃんの名前が出てきて,ぼくは身を乗り出した。
ぼくが就職したとき,松ちゃんはすでに20年近い人院患者だった。ぼくが勤めていた15年岡にも,たった1度の外泊さえなかった。彼は京都の大学で応用化学を勉強していたころに発病したという。独語空笑,衒奇的振る舞い,無為白閉。典型的な分裂病による人格荒廃のケースだと医師から教えられた。
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