精神医療の模索・5 精神衛生法の功罪
実践の積み重ねしかないか—罪の面から
西山 詮
1
1東京都立墨東病院神経科
pp.336-338
発行日 1978年4月1日
Published Date 1978/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206519
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精神衛生法と行政
精神衛生法(以下には精衛法と略記)には調和しがたい二面がある.一は人身の拘束に根拠を提供する法としての,いわば性悪説的な面であり,他は精神障害者に対する福祉と医療を促進する,いわば性善説的な面である.性悪なるものがあるのに,これがないかのごとくにみなして,精衛法をもっぱら福祉と医療の法律であると主張したり,性善なる面の促進が必要であるのに,これを等閑にふし,もっぱら保安的方向を強化するのは,いずれもはなはだしい失当である.
主力は人身拘束法の面にあるにもかかわらず,これに対する配慮,つまり人権に対する配慮におそろしく欠けていること,福祉的,医療的側面がほとんど全く無視されていること,この二点が,そしてとりわけ前者がわが精衛法の主要かつ根本的な欠陥であろう.
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