特集 薬物依存症看護が「苦手」だと感じる看護職のみなさんへ
解毒入院の医療的枠組みをこう決めている
松本 俊彦
1
1横浜市立大学医学部精神医学教室
pp.28-35
発行日 2003年7月15日
Published Date 2003/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900584
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統合失調症モデルを捨ててかかわる必要がある
薬物依存症患者を入院させると大変である。たとえば,覚せい剤の急性中毒性精神病はしばしば重篤であり,夜通し隔離室の壁を激しく叩いて怒鳴り続ける者も多い。それでいて,幻覚妄想の渦中にいるときでさえ,どこか虎視眈々と医療者の隙をうかがっている。幻聴が激しいときでさえ,同じ覚せい剤精神病患者を見つけると,覚せい剤の入手ルートについて情報交換していたりする。
しかし,そろそろ我々医療者は自分自身が陥っている病気をふりかえる必要があるのではないであろうか。精神病院の大半が,統合失調症という「枠」になじみやすい,受け身的で寡言な人たちを対象として作られている。統合失調症の患者は,治療「枠」によってかえって精神症状が安定することが多いが,薬物依存症の患者は「枠」が作られると,「枠」を叩いたり揺すったりして,その強度を試さないではいられない。
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