連載 ケアフルな一冊7『身捨つるほどの祖国はありや』
私たちの自己決定とは
坂田 三允
1
1長野県看護大学
pp.66
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900156
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一人の人にとって,祖国とはどのようなもの,あるいはどのような意味を持つのだろうか。私は自分が日本人であることにずっとこだわりを持ってきた。しかし,それは日本という抽象的な国家とは何ら関係のないものであった。私は「私とは誰か。私がどこからきて,どこへ行こうとしているのか」という問いのなかで,日本を見ていたにすぎない。もちろん,日本という国が嫌いだというわけではない。愛国心などというものからは程遠いにせよ,むしろ日本の風土や日本人らしさのようなものはとても気に入っている。ただ,私にとって日本という国家と祖国という概念が結びつかなかったのである。
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