連載 くすりのくすり3
「騒ぐ患者」への処方
鈴木 純一
1
1川越同仁会病院
pp.72-73
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900062
- 有料閲覧
- 文献概要
カルテから消えたもの
知人の精神科医から聞いた話である。彼は,精神分裂病者の予後研究のために,ある精神病院の膨大なカルテを読んだ。すると驚いたことに,1960年頃を境にしてカルテの記載に顕著な変化が起こっていることに気がついたという。記載の量は減少し,それまでは毎日のように書かれていた精神病院での「大問題」が極めて少なくなり,精神分裂病の症状の強弱の記載が主になっていた。ある患者が同室の患者と喧嘩をしたとか,暴れてガラスを割り怪我をしたとか,病院を抜け出して行方不明になり大騒ぎをしたとかいった日常的な出来事が,カルテから姿を消してしまったわけだ。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.