特集 くすりのはなし
マスコミが騒いだアンプル禍事件の背景
村松 博雄
pp.45-48
発行日 1965年5月10日
Published Date 1965/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203394
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
くすりを飲んで死ぬのに忙しい
イギリスの作家H・G・ウエルズは,その80年に近い生涯を終るにあたり,ベッドのかたわらからみんなどいてくれ,という素ぶりを示した.近親の者が急いで耳を彼の顔に近づけると"死ぬのに忙しいんでね"とつぶやき息をひきとった.
19世紀の半ばから1946年まで,実に1世紀にちかい生涯をゆうゆうと生きつづけてきたウエルズにして,はじめて口にできる気のきいたセリフだと思うが,それから20年を経たいま,わが国の現代人は,さきごろのかぜのアンプル禍の事件が示すとおり"くすりを飲んで死ぬのに忙しい"のではなかろうか.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.