特別記事
薄氷のような連帯
中村 佑子
pp.526-534
発行日 2021年11月15日
Published Date 2021/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200940
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何から語りはじめればよいだろう。もう10年以上前になる。私の母は、ある精神科病院を受診し、主治医の先生の顔を見た途端、その場で倒れ意識を失った。母に付き添い、私もしばらく入院病棟に寝泊まりした。そこは女性だけの病棟で、実にさまざまな患者さんが入院していた。いや入院ではなく、そこに住んでいるといっても過言ではない人が多くいた。この病院で出会った彼女たちのことを、ときおり強く思い出す。
母はその後、意識を取り戻して退院し、要介護5がついて、自宅介護がはじまった。しかし10年を経て、今では要介護3にまで復活した。この10年の日々は、私たち家族が今の日本の精神医療との距離を測ってきた日々といえるだろう。振り返ってみたいと思い、今回あらためて調べたら、私が母に付き添っていた日々は、たった数週間だった。私は数か月の期間だと思っていて、記憶のなかでは永遠とも思える時間だった。そこに、ここで感じたことの強さが反映されているのだと思う。
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