連載 木田っちの、介護ヘルパーをやってみたっち。・2
透明になれない、不透明な私
木田 塔子
1
1東京大学医学部健康総合科学科看護科学専修
pp.488-491
発行日 2021年9月15日
Published Date 2021/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200931
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訪問ヘルパーとしてまだひとり立ちしていなかった頃。私に同行した先輩ヘルパーは、利用者さんのお部屋に入ると、パソコンを使ったお仕事の最中だった利用者さんに軽く挨拶し、部屋の隅に黙って正座して利用者さんの指示が来るのを待った。私もそれにならって、肩をすぼめてなるべく気配を消すようにして黙ってちょこんとその隣に座った。
訪問ヘルパーは、利用者さんが主体的に行う生活に入りこんでいく存在だ。利用者さんの思い描く生活が最大限スムーズに進んでいくように努めなければならない。であれば、ヘルパー自身は己を消して利用者さん自身の思い通りに動き、究極的には意識にものぼらないほどの“透明な存在”であればあるほど良いのだろうか。そんなことを考えながら、なるべく気配を消すようにして部屋の隅に座ったのだ。
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