遺伝医療ってなに?・3
20万円<3万円?
櫻井 晃洋
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1札幌医科大学医学部遺伝医学
pp.292-293
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200270
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Google検索で“遺伝子検査”という言葉を検索してみると,医療機関に行かずに簡単に遺伝子を調べてくれるというサイトが驚くほどの数でヒットする.いずれも唾液やこすり取った頬粘膜を専用の容器に入れて返送するもので,実に手軽である.判定する項目も癌や生活習慣病のリスクはもとより,飲酒傾向,薄毛,目の色(遺伝子より鏡のほうが正確では?),性格分析など,実にさまざまな項目が並んでおり,料金も項目数によって数千円から数万円程度であるから,安くはないものの手の届かないほどのものでもない.解析項目のなかには“乳癌のなりやすさ”というのもある.今や乳癌は日本人女性の7%が生涯のうちに罹患するcommon diseaseであるから,切実な関心をもつ人も多いだろう.第1回に女優のアンジェリーナ・ジョリー(以下,アンジー)が,遺伝子診断の結果をもとに予防的乳房切除術を受けたことに触れたが,遺伝性乳癌卵巣癌症候群の原因遺伝子の検査は,わが国では現在20万円ほどの費用がかかる.病院に行く手間もかかるし採血だってちょっと痛い.これに対してインターネットの検査は数万円で,乳癌リスク以外の数百にも及ぶ項目も判定してくれるなら,そちらのほうが断然お得,と思う人がいても不思議ではない.いや,そのように思うほうが自然だ.実際に筆者はそうした質問をすでに何度も受けている.“乳癌”と“遺伝子検査”というキーワードを共有する両者の違いについて,一般市民のどれくらいが正確に理解できているだろうか.
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