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くさめ(嚏)・3
pp.253,259
発行日 1953年5月20日
Published Date 1953/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200898
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- 文献概要
このクサメの文献は,老尼のクサメ,クサメと云つてあるいたという徒然草に初まるのであるが,之が兼好法師に依つて書かれたのは,建武の頃で,今から600餘年の昔である。その徒然草には日本語として,譯のわからない語がチヨイチヨイあつて,それ等は河口慧海師によつて西蔵語で解釋出來たということを聞いた。クサメもその意味が不明語の一つであるから河口慧海師に調査をお願したことがある。先生はお多忙にも拘らず,2晩かかつてヤツト之だろうと教えて下さつた。
西蔵語でク(ン)サ(ン)モエで,一切の吉祥を願うという意味である。本當はクンサンモエだが,他の西蔵語でも日本語化する時はンがしばしば失われているから之をクサメとなつたと認めてよかろう。尤も西蔵の文献に,人が嚏をした時,クサメと云うと出て居たのを見出された譯でもあるまいから,暫らくお預りとするが,國語で不可解のものが,西蔵語で立派に有意義に解し得ることは興味あることとせねばならない。ソ聯では現にサヨナラという場合に,「一切の吉祥を願う」と云う意味の語を云い合つている。
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