連載 ふしぎの国のデイケア・6【最終回】
人と構造—デイケアの辞め方
東畑 開人
1,2
1十文字学園女子大学
2白金高輪カウンセリングルーム
pp.408-413
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200511
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精神看護の老翁は風のように去りぬ
別れはさみしい。区切りがついて、ほっとすることもあるし、せいせいすることだってあるけれども、同時にやはりさみしい。お別れによって、当たり前のように続いてきたものが途切れる。大切にしていたものが失われる。だから、さみしいし、時にはつらいこともある。
だけど、別れをさみしく感じさせない技もある。「これで最後」であることを隠してしまえばいいのだ。そう、最終回だと気づかれないままにいなくなってしまえばいい。「さよなら」と言われるからさみしいわけで、薄くなり始めた頭髪がそうするように、別れを告げることのないままひそかに去られてしまうと、さみしいと感じることもない。「あれ? そういえば、最近あいつ見なくね?」「そうだっけ?」「わかんない。気のせいかもしんない」となってしまえば、さみしさに居場所はない。
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