特集 ナースに選ばれる病院
ナースはなぜ病院を辞めるのか,辞めたがるのか
稲岡 文昭
1
Fumiaki INAOKA
1
1日本赤十字看護大学
pp.421-423
発行日 1988年5月1日
Published Date 1988/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209291
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はじめに
この5〜6年来,病院の倒産というニュースを耳にするようになり,病院経営をめぐる問題がクローズアップされてきて,それに伴い,医療サービスの質の向上が問われるようになってきた.これら両者の問題をナースに関係する視点から眺めた時,ナースの人件費が病院経費のなかで大きな比重を占め,また看護ケアの質が医療サービスの質に影響を与えるため1),改めてナースの退職,あるいは病院外職場移動(turnover)が注目されるようになってきたのは当然といえば当然のことである.
アメリカでは,一人のナースを雇用し,オリエンテーションを含め,その病院でひとりで働けるまでに要する人的・時間的エネルギーは,お金に換算するとざっと40万円と言われている2).このようにして雇用したナースは,2〜3年してやっと"一人前"になり,職場でリーダーシップの発揮が期待される26〜29歳になると,急に退職の欲求が強くなり,実際に病院を辞めていく.特に大都会の病院では中堅ナース不足の現象が慢性化し,新卒ナースの指導上の問題に直面していると言われている3).
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