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はじめに
仕事を辞めたくなるときは,職業や役割に限らず,誰にでも訪れるものである。最も身近に聞くのは新人看護師による早期離職であるが,理由は業務に関するものと人間関係に関するものに二分化される。その対応策が,新人看護師研修制度の導入である。
看護教員が辞めたくなる理由も大きくは変わらない。人間は新しい環境に適応していく過程において多大なストレスを体験する。就職1年目の看護教員の辞めたい理由も新人看護師に似通っているものがある。業務が多様で戸惑いが多いことや臨地実習という所属組織である学校とは別の組織にも適応しなければならない多重課題によるストレスを経験するためだと推測される。経験年数を重ねた教員の辞めたい理由は,多種多様な業務量と言われているが,一言では集約できない個別の問題と人間関係が背景にある。
経験年数と給与はある意味関連しているものである。経験年数と同時に不特定の役割が付与される。経験年数を重ねるとメンバーからリーダーへの変容を求められる。幅広い管理力が必要とされてくる。この力量を自己推察する時期を迎えたときが決断の時期になる。また,大学・大学院進学者は修了とともにキャリアアップをめざす転職時期を迎える。その他,日々の業務に行き詰まりを感じ臨床か教育かの選択に悩む時期と,経済的理由による転職時期がある。
学校管理職に求められることは,第一に教育の質の担保である。看護基礎教育に求められるものは医療の現場に対応できる看護実践力を習得した学生の育成である。加えて専門学校では少子化に伴う学生数の確保という現実的かつ深刻な問題もある。このような現状においては,「人こそ最大の資産」である。この資産を失わないために日頃からどのような対策を講じるかが管理職に課された命題でもある。
故に「辞めたい」と聞いたときでは遅い。「辞めたい」と聞く前に管理職が考えるべきこと,「辞めたい」と聞いた後の対応について,思うところを述べる。
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