特別記事
入院患者の自殺を防ぐために―必要な知識と対応
河西 千秋
1
,
河合 桃代
2
,
西 典子
3
1横浜市立大学医学部精神医学教室
2財団法人日本医療機能評価機構認定病院患者安全部
3横浜市立大学医学部看護学科
pp.858-865
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101044
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本の自殺者数は1998(平成10)年に異様な激増をきたし,以来昨年まで9年連続で毎年3万人(自殺率約25/10万人)を超えている(図1)。そして昨今ようやく自殺が深刻な社会問題として捉えられるようになり,2006(平成18)年10月に自殺対策基本法が施行され,2007(平成19)年6月には自殺総合対策大綱1)が策定された。ここに国家レベルでの自殺予防対策がようやくスタートしたわけであるが,実効的な対策の立案とその実現はこれからの課題である。
一部のマスメディアの論調もそうであるが,自殺問題をすべて国や政府に依存するものや他人事のように論ずるものがある。しかし法にも大綱にも謳われているように,自殺対策は国民すべてのタスクであり,個人と個人の関係性,職場,学校,医療,地域保健・福祉,行政,消防や警察,そして報道機関などあらゆる領域のあらゆるレベルで取り組まなければ,自殺を減らすことはできない。また,限りなく自殺を減らしていくためには,継続的な取り組みとそれを効果的なものにするための調査・研究も欠かせないし,さらに言えばこれらの活動を担保するような経済措置と人材の育成も欠かせない。
自殺問題は,「あらゆる領域・レベルで取り組むべき課題」と述べたが,もちろん病院や看護の現場とて例外ではない。本論では,まずわが国における病院・入院患者の自殺事故の実態を示し,自殺予防のための対策について論ずる。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.